私の父は他界している。なので私の母はこのことを一人で受け止めることになる。
とまどうのはわかっている。身近にこういうことをした人もいないわけだから仕方たない。
母が同居している妹へ連絡をした。
いつも家族に重大なことを打ち明けるとき、どきどきする。
あー、この瞬間。思い出す。前回はそうそう、「この人と結婚します」って言うときたっだっけ。
「もうお母さんに言っておいたよ。なんだか大役をまかされて、大丈夫なのかって心配してる」と妹。
私達だけで決めてしまったことをなんと言うか。
「私から話すよ」
もう壁をぶち破るしかない。
「話は聞いていると思うけど・・。この前子宮の検査があって、私の子宮で子供を産むことのリスクを聞かされたんだ。」
「もう何年もたっているから大丈夫なんじゃないかと思っていたのにね。」
「先生に言われても大丈夫かもしれないと何度も思いたかった。だって自分で産みたいもん。でもリスクもあるんだよ。私はいつ子宮が裂けてしまうかというそんな爆弾を抱えて妊娠期間を過ごすなんて、精神的にどうにかなるかもしれない。どっちに決めていいか、自分の気持ちがいったり来たりだったんだよね」
「そうだね。それはやっぱり危険だね。」
「うちの彼は絶対わたしが自分で産むこと反対。もう私があんなに苦しんでいる姿みるのは地獄だからいやだって。ドクターは体外受精をしたうえで、代理出産という選択があるから、そうしたらどうかって言っているの。二人の卵子と精子を使うので遺伝子的には私達の子だって。」
「今の時代はすごいわね。そういうことはドクターはよくやっているの?」
「うん、不妊治療専門医だし、卵子提供とか代理出産の話はよくしていたよ。代理母の候補ならいるからとも言っていた。そんな話を打ち明けたら、あの子が私が産んであげるからって。」
「あの子はいとも簡単に私が産んであげようかと思って、なんて言い出して・・・。体も小さいんだし、仕事もしているし、二人の子供だって仕事から帰ってきて面倒見るのが精一杯なのに、どうやって・・・・・」
心配な気持ちはわかる。私も一緒だ。
「食事だってあんなんじゃね。食べたり食べなかったりむらがあるし、若いんじゃないんだから体しっかりさせないと妊娠なんて無理よ」
妹と同居している母が一家の食事は担当しているが、なかなか食べ方にむらがあるそうだ。
「出産まで無事たどりつけるかが心配よ。ましてや双子になってしまったらどうするのか・・・」
周りのサポート、家族全員のサポートが必要となる。その中でも母への負担はかなり大きい。
「お母さんはね、子供がいない二人の人生も自由があっていいじゃないとずっと思っていた。りこちゃんたちはそういう人生を歩んでいくのかと思っていた。こんな方法があるなんてことも夢にも思っていなかったしね。あの子がりこちゃんをどうしても助けたいっていうし、あななたち姉妹が、どうしてもしたいということをお母さんには止められない。」
「色々迷惑かけると思う」
「うまくいくといいね」
「うん。考えたら、これから長い道のりだよね。たとえうまく妊娠できたとしても体外受精の期間も入れたら、産まれるのは1年半後とかそんな感じかあ・・私の卵子で体外受精しても成功する確率はすごく低いんだって。」
「まずはどうするの?」
「あの子がこちらにきてドクターに診てもらうことからよ」
私の家族の賛成を得て、そのときから、私達の赤ちゃんに出会うまでの長い旅が始まった。これからぶち当たる多くの難関など誰が想像できただろうか。
―続く―