こんにちは。ミラクルベビー石原です。
5月24日付読売オンラインニュースに掲載された記事“やめたくてやめるわけではない「不妊退職」”を複雑な思いで読みました。日本では不妊治療に関わる問題がたくさんあり、まだまだハードルの高いことなのか、という思いでいっぱいです。
「不妊退職」しようか揺れ動く女性達
この記事では、ある一人の女性が不妊治療を受けながらフルタイムで働いていたが、不妊治療を継続していくためには予定の立たない遅刻・早退・欠勤を重ねなくてはならず、会社でも不妊治療をしていることを隠しているため、周りの人たちからの理解が得られず、一人で悩んでいる、という内容でした。この女性は、度重なる遅刻・早退・欠勤が続くことに罪悪感を感じ、周囲に相談することもなく、不妊治療のことを隠し続けて不妊退職する道を選びました。
不妊退職をするべきか、仕事を続けるべきか悩む時、多くの人が
仕事は楽しく任されていることも多いので出来ればやめたくない。
収入源が無くなると、不妊治療がいつまで続けられるのか不安。
仕事を辞めても不妊治療で結果が出るという保証にはならない。仕事も無し、子供も無しの人生はむなしいな。
不妊治療だけだと精神面で辛いことが多いので息が詰まることもある。成果を出したいのはあるが、仕事で治療を忘れる時間も必要かも。
と揺れ動いています。両立はどんなことでも楽ではありませんよね。育児だったら、第三者がベビーシッターとして助けてくれたりするけれど、不妊治療が大変なのは本人が行かなくてはならないこと。
また、職場に伝えると覚悟する前には、やはり会社の人にどう思われるだろうか、という不安があります。
不妊治療をする人に心ない言葉をかけてくる人もいる
かわいそうと思われるのがいや
不妊治療で出来た子は成長がうんぬん・・・と否定的なことを思う人もいる
伝えたことによってかえって嫌な思いをするのではないかと。だったら、言わないで退職するほうが楽だなあと思ってしまうのです。
アメリカでは、不妊治療を会社に伝えずに仕事をしている人はあまりいないのではないかと思います。できないものには医療の力を借りる、くらいの考えです。それに歯の治療や通院の際も、それに必要なだけの休みを取るのが普通で、特に休みを取る理由を伝える必要もないんです。誰も文句も言いません。本当に遅刻や早退、欠勤が頻繁になる場合は、本人が会社宛の説明の補助として、ドクターズノートというドクターからの手紙を入手して上司に出すことはあります。ドクターズノートには、「私のところで治療している患者さんで、タイミングが重要な検査や治療があるため、いついつは来る必要がある」というような内容が書いてあります。 ドクターとのアポのために会社を抜けるのは、当然の権利で、何が悪いの?という感じですね。
これを文化の違い、お国柄の違いというのかもしれませんが、こんな統計もあります。出産ジャーナリストの河合蘭さんが書いた記事(2016年12月12日wotopiに掲載)によると、福岡県にある不妊治療クリニックで行われたアンケートによると、働きながら不妊治療を受けている人の二人に一人は、職場に不妊治療を受けていることを伝えているようです。さらに、会社に不妊治療について伝えた人たちの90%近くが「会社に不妊治療のことを伝えてよかった」と回答しています。伝えてよかったと感じる理由として、休みがとりやすくなった、協力を得られるようになった、気持ちが楽になった、理解が得られるようになった、など精神的に良い環境となったことがうかがえます。また、このアンケートで「職場で不妊治療に協力的な人はどんな人か」という問いには、女性の同僚に続いて多かったのが、男性上司でした。さらにいえば、男女問わず上司が協力的と答えた人の70%は男性上司が協力的という結果も出ています。
現状打破!! 飛び越える勇気をもって
ケース1 ある私のクライアントさんで、卵子提供を受けて子どもを授かりたいという方がいました。夏休みや大型連休以外に長期の休みを取るのがとても難しい雰囲気の職場だったので、もう治療を海外で受けることを打ち明けてしまった方がいいと考え、ある日上司に話ました。
上司の反応は、
「それは大変な決断だったね。実は、私の妹も子どもができなくてこの前、卵子提供を受けることを決断したよ」
意外にも身近な人で同じ悩みを抱えている人がいたのです。上司は応援すると言ってくれ、今まで言い辛かった休みの申請もスムーズに行くようになりました。
ケース2 他のクライアントさんで、やはり海外に治療に来る方がいらっしゃいました。フルタイムだと自由なときに休みが取りづらく、他の人にかかる負担も大きくなってしまうため、思い切ってパートタイムに変えてもらうことができるかと上司にお話しました。会社の方も彼女を必要としていたので「パートタイムでも続けてくれるのはうれしい」と言ってもらえ、気持ちが楽になったそうです。
今や、多くの女性が不妊治療で悩んでいるという現状は社会問題になっているくらいですから、上司がたとえ男性であっても知らないわけがありませんね。あなたの上司の周りにも数人は不妊に悩んでいる人がいて、大変さを聞いたことがあるかもしれませんよ。
だから勇気を持って話してみてください。
「私、今すごく悩んでいることがあるんです。OOさん(上司)にどうやって伝えようか、もっと早くに相談するべきだったのかもしれませんが、毎日毎日考えてそれでも勇気がなかなか出なくて今日になってしまいました。」
「どうしたの? 何か困ったことでもあるの?」
「今の仕事はとても楽しくやりがいがありますし、(上司の)OOさんやチームのメンバーにも恵まれて(など現在の仕事がどれだけ好きか、あなたの熱い思いを伝えよう!)」
「そうか、それは良かったね。A子さんがうまくみんなをまとめてくれているので助かっているよ。」
「そう言ってくださる中、とても相談がしづらいのですが、私は今子どもを作りたくて不妊治療をしているんです。ちょこちょこ抜けることがあるのは、治療には様々なタイミングを必要とするものがありまして・・・事前に読めないこともありますし、頻繁に病院へ行かなければならないからなんです。
私が治療のため職場を抜けると、みなさんに迷惑をかけることになるのでそのたびに心苦しいです。会社を辞めなければならないのか辛い決断をしなければならないのか真剣に悩んでいます。でも何かの解決策があって治療を続けながら、私が働いていける方法があればとOOさんにお話しようと決断しました。」
ここで、
「うちの会社にはそういう融通性はないよ、無理無理」
なんて言われたらそれまでの会社です。さっさと去ろうじゃないですか。でも上司が少しでも考えてくれたり、提案してくれたりというのがあれば、うれしいじゃないですか。いい方法があれば万々歳だし、たとえこれが結果的に難しいということになっても、あなたの中で、気持ちの整理もついて退職できると思いますよ。
そんなシナリオ通りに行かないよ! と言われるかもしれません。でも、何か進んでみましょう。上司に何と切り出すか、相談の仕方を紙に書いてみましょう。この状態をストレスを抱えながら続けていく方がずっと辛いし、どんどん時間がたってしまうことが一番怖い。妊娠する体作りのために、いいことなんて一つも無いから。
不妊治療は、注射も打つし、検査もするし、薬も摂るし、通院もする。これを仕事をしながらするのは大変なことだと、多くの人に知って欲しいですね。不妊治療をしている女性達は自分ひとりで悩んでいる人が多いので、殻に閉じこもりがちです。大きい会社であれば、会社内で同じ状況の人が絶対に何人かいるはずなので、そういう仲間と一丸となって上司に協力をしてもらうよう話ができれば、いいですよね。
会社に不妊治療のことを伝えることは一つのかけかもしれません。でも何もせずに会社を去ってしまうのは非常にもったいないことだと思います。有能な人材が相談なしに退職を選んでしまうのは残念です。