私の主人は私達が代理出産を決断したことを、自分の家族には話さなかった。
「どうして話さないの?」
「だって理解してくれないよ」
「私の体のこと説明したらわかってくれるんじゃないの」
私達が不妊で悩んでいることも気になってはいるのだろうが
あちらからは何も聞いてこない。
「いいよ、まだ成功するってわからないじゃないか」
「そうだけど・・・」
私の方は一応、母を説得でき協力体制を作ろうとしている。
母は不安をまだかかえているが、前に進んでいくうちに色々
解決していくしかないと思った。
主人の家族は日本にいる。
彼は「もう少し落ち着いたら話すよ」
といって、今は話したがらなかった。
彼は彼のお母さんとけんかをよくする。
お互いによくぶつかるのだ。
こんなに遠くに離れて暮らしているのに
たまにしかしない電話でけんかして切ってしまうのだ。
「なんでそんなにつっけんどんに話すのよ、
お母さんかわいそうだよ」
と私はよく言う。
今話して反対されるのも、実は怖かった。
色々な想像をすればするほど、前に進めなくなる。
彼の家族のことは彼に任せるしかなかった。
話は前後してしまったが、決断する前には
資金調達で頭を悩ませた。
代理出産と一言で言ってもお金がかかるのである。
体外受精だって私の卵子を使えば、1度で成功する
確率はとっても低いのである。
何の苦労もなしに赤ちゃんを授かる人もいれば
大金をはたいて全財産を崩し、こういった医療の
力を借りないと授からない人もいる。
神様は私達に不公平だと思った。
私達にそんな大金のキャッシュはなかった。
「ねえ、お金どうするの?」
「ラスベガスの家を売ればいい」
「は?」
「売ればお金になるんだよ」
「売るって・・売っちゃうの?」
テナントさんが入っているのだ。
そんな簡単に言うけど・・・。
この家は私達が結婚をしてから将来のためにと
ラスベガスに投資用に買ったものだった。
始めての投資で少ない貯金をはたいて
びびりながら、数年前に購入したものだった。
二人の思い出もある。
運良く価値が少し上がっていたので、
これを資金にあてようという主人の考えだった。
「テナントさん、追い出さないと売れないよね」
「彼らが買ってくれないかなー?」
「さあ?」
「聞いてみてよ」
ということで、いとも簡単に彼は「家を売る」などと
言うのである。
そして簡単に実行出来ると思っているのである。
「ちょっとー、そんな簡単に言うけどねー、テナントが
入っている最中は、家を売りに出したって見せることなんて
協力してくれないよ。」
次の日から私は、家を売るために現地の不動産屋さんと
家を管理してくれているマネジメント会社に、毎日のように
電話をかけた。
アメリカではこういった場合、なかなか事が前に進まない。
いらいらするのだ。新たな問題に頭を痛めた。
家を売るというのは大仕事なのである。
何人もの人を動かさなければならない。
なんでそんな大変なのかと言う彼が憎たらしくも思えた。
ストレスになっていた。
―続く―