あるドナーの方の言葉です。
私は日本から親元を離れこちらにきて
本当に頼れる人は仲のいい友達だけ。
ドナーとして卵子提供をするいうことは、批判的な意見を
聞きたくないのでその友達にもいっていない。
そんなたった一人の秘密なのである。
注射が始まって一人こっそりバスルームに入り、
「カチッ」
ドアの鍵をする。
注射が入った入れ物を開ける。
薬を吸出し、針の先を眺める自分。
その注射針をぷすっとおなかにさす。
その瞬間、われに帰る。
「私何やってんだろう?」
自分の行動が不思議に思われる瞬間がある。
見たこともない、名前さえしらない
私を選んでくださった依頼者の方。
架空のような世界にいるような感じ。
その方のために、私はこうやって毎日
バスルームにて注射を打っているのだ。
友達が家にくるときにはその注射が入った箱を
キャビネットの奥へ隠す。
現実の世界だ。
バスルームへの一枚の扉が私の世界を2つにわけている。