こんにちは。ロサンゼルスで不妊治療のコーディネートをしているミラクルベビー石原です。先日、不妊治療にはビタミンDの摂取が重要であることについてブログを書きましたが消えてしまいましたので、以下、再度投稿させて頂きます。
これらの情報は、いまいウィメンズクリニック今井文晴先生、City Living jp齊藤英和先生、ウィメンズクリニック大泉学園 大泉Newspaper #122、オレゴン州立大学微量栄養素情報センター、厚生労働省統合医療にかかる情報発信等推進事業「統合医療」情報発信サイトより抜粋させていただきました。
目次:
- 意外と多い「ビタミンD欠乏症」
- ビタミンDのはたらき
- ビタミンDと子宮の不調
- ビタミンDと不妊治療
- ビタミンDと妊娠
- ビタミンDの摂取方法
- ビタミンDを日光より摂取する場合の留意点
- その他の場合のビタミンD不足
意外と多い「ビタミンD欠乏症」
日本からアメリカに不妊治療にいらっしゃる方が血液検査をすると、ほとんどが「ビタミンD欠乏症」と言われます。こちらのドクターから「妊娠出産をするためにはビタミンDは不可欠だ!」と言われすぐ摂取するように言われます。不妊治療を受けていた日本では「ドクターにビタミンDについては言われたことはない、初めて聞きます」という方が多いのですが、日本ではあまり一般的ではないのでしょうか。アメリカとの違いを感じます。
ビタミンDのはたらき
ビタミンDは骨の形成にかかわる大事な栄養素の一つとして知られていますが、このビタミンDが不足すると、体の様々な部分で不調が起こることが分かってきました。例えば、若年層の場合は肺や言語の発達の遅れ、思春期における骨密度の低下、摂食障害の増加、妊娠出産におけるリスクなどです。生殖医療の分野におけるビタミンDの欠乏では、どのようなことが起きるのでしょうか。
まず、ビタミンDが十分足りているかどうかは血中濃度で分かります。日本人の正常範囲は20-60ng/mlです。一日に必要なビタミンDの摂取量は200 IUで、一日の上限は2,000 IUです。この数値より少なくても多くても体に不調をきたします。ビタミンD欠乏症は、血中ビタミンD濃度が20ng/ml以下を言い、骨粗鬆症、高血圧、がん、歯周病、自己免疫疾患、Ⅰ型糖尿病、うつ病、多発性硬化症などの疾患を発症します。ビタミンD過剰では、高カルシウム血症、高血圧、肝機能障害、尿路結石、じん不全などを発症します。生殖医療分野でビタミンDが不足しているとどのようなことが起こるでしょうか。
ビタミンDと子宮の不調
子宮の疾患として、子宮内膜症や子宮筋腫がありますが、これらはビタミンDの不足が原因と考えられているようです。子宮内膜症は、子宮内膜の細胞が卵管を逆流して腹腔内に落ちるために起こる症状で、ビタミンDがこの症状を抑えてくれます。一方で、ビタミンDが28ng/mLを超えると内膜細胞が卵管を逆流することを防ぐ働きが悪くなるため、子宮内膜症の発症リスクは4.8倍になるようです。
子宮筋腫を持っている方は、筋腫がない方より血中ビタミンDが低いようで、ビタミンDが欠乏している場合、子宮筋腫を持っている確率は2.4倍になります。このように、ビタミンDは子宮筋腫の治療に有効であるといえますが、今のところはマウスでの研究にとどまっており、ヒトでの研究はまだ行われていません。
ビタミンDと不妊治療
不育症の方でビタミンDの数値が低い場合も、自己免疫や細胞免疫の異常の割合が高まるため、流産を繰り返すリスクが上昇するという報告があります。体外受精の場合では、妊娠が成立しても超音波検査で胎児の心拍が確認できない、早い時期に流産してしまった方と、胎児の心拍が確認できた方を比較してみると、胎児心拍が確認できた方のほうがビタミンD濃度が高かったそうです。ビタミンD濃度が高めの方(107ng/ml)はビタミンD濃度が低めの方(42ng/ml)に比べて体外受精の成功率は4倍高くなりました。
卵子提供によって作られた受精卵の移植について調べた研究では、ビタミンDが欠乏していた方の妊娠率37%、出産率31%でしたが、ビタミンDが十分あった方は妊娠率78%、出産率59%と約2倍多い結果となりました。
ビタミンDと妊娠
妊娠においてビタミンDは、どのような働きをするのでしょうか。受精卵が着床する子宮内膜にはビタミンDが豊富です。卵胞には顆粒膜細胞という小さな細胞がたくさんあるのですが、卵胞が育っていくにつれて顆粒膜細胞の数を増やし、卵胞ホルモン(エストロゲン)を作ります。ビタミンDはこの顆粒膜細胞に働きかけてホルモンを作るということが分かってきました。このようにビタミンDが働くためには、ビタミンDが結合する受容体が必要です。生殖関係では、卵胞以外にも卵巣や子宮内膜、胎盤、脳下垂体にその受容体が存在します。男性では精巣や精子に受容体が存在し、ビタミンDはこれらの臓器や細胞に働きかけているのです。ビタミンDは女性だけでなく男性にも大切で、精子の運動性を上昇させ、受精に必要なアクロゾーム反応を起します。
*アクロゾーム反応:精子が卵子に到着すると起こる反応。
ビタミンDの摂取方法
ビタミンDは、卵巣機能や着床をはじめ広い範囲で生殖と関連しており、妊娠を考えている方には非常に重要なビタミンとなります。では一体どのように摂取すればよいのでしょうか。ビタミンDは食品からの摂取方法と、日光を浴びることにより皮膚でビタミンDが生成される方法があります。
食品からビタミンDを摂取する場合は、いわし、鮭、さんま、うなぎなどの魚類や、キノコ類に含多くまれています。しかし、ビタミンDを天然に含む食品は非常に限られているため、ビタミンDを補充した食品(シリアルなど)やサプリメントなどで補うことが重要となります。
ビタミンDは人間が唯一体内で生成できるビタミンで、皮膚が日光に当たることにより生成されます。皮膚から合成されるビタミンDの量は、紫外線の量によって異なり、季節や住んでいる地域によっても異なります。例えば、10μgのビタミンDを合成するためには(厚生労働省によって定められた食事摂取基準では、30~49歳女性の1日の目安量が5.5㎍)、12月中旬であれば横浜市で45分の紫外線照射が必要であるのに対して、札幌市では300分も必要とします。また同じ横浜市でも7月中旬であればわずか9分の照射で合成が可能となります。
ビタミンDを日光より摂取する場合の留意点
皮膚が日光に当たると体内でビタミンDが生成されますが、皮膚を数分間以上日光にさらす場合は、皮膚がんのリスクを避けるために皮膚を日光から保護することも必要です。しかしながら、日光を限定する、日焼け対策のための服や帽子を身に付ける、日焼け止めを塗るなどは、肌が日光に当たる邪魔をします。また、屋内の窓越しで日光に当たる、曇りの日、日陰も皮膚によるビタミンD生成量を低下させる原因となり、サプリメントや食品からの摂取がないとビタミンDの生成が減ったり、血液中のビタミンDが減ったりします。過度な日焼け対策はビタミンD不足を引き起こすので注意が必要です。
その他の場合のビタミンD不足
このような過度な日焼け対策によるビタミンD 不足のほかにもビタミンDの摂取が十分でない場合があります。
- 母乳で育てられた幼児(母乳はビタミンD を豊富に含んでいないため、母乳で育てられた幼児には毎日400IUのビタミンDサプリメントの補給が必要です)
- 50歳以上の成人(若いころと比べて皮膚でのビタミンDを生成する効率が悪くなっているため、毎日2,000IUのビタミンD 補給が必要です)
- 肥満の人(体脂肪はビタミンDが血中に入るのを阻害します)
このようにビタミンDは不妊治療にも大いに役立つビタミンのひとつと言えるので、まずは自分のビタミンD 血中濃度を知ることが大事だと思います。