こんにちは。ミラクルベビー石原です。
私自身、子宮筋腫の摘出後の妊娠で子宮破裂の経験があり、その時はとても稀なケースだと言われていたのですが、最近よく「子宮が破裂してしまい子を失った。次は代理出産という道を考えている」というお問い合わせを頂きます。稀だとは言えどんな状況でなるものなのだろうか?と思い、病院が出している情報から子宮破裂について調べてみることにしました。そして日本にもいくつか事例があることがわかりました。
目次
1.子宮破裂とは
2.子宮破裂の原因(子宮筋腫摘出、帝王切開後の経膣分娩、陣痛促進剤)
3.子宮破裂の事例
4.まとめ
子宮破裂とは
子宮破裂とは、妊婦の子宮に裂傷ができてしまう疾患です。症状は、腹部の激痛、大量出血、陣痛が弱くなるなどがあります。子宮破裂から母体と胎児を守るには迅速な対応が必要ですが、その対応が遅れると、母体は出血性によるショックで死亡する場合があります。また、胎児は酸素が十分に行き渡らないことにより重篤な脳障害をおったり、裂傷部分から胎児が子宮の外へ出てしまい死に至る場合もあります。子宮破裂は分娩全体の0.05%~0.1%と発生頻度は非常に低いですが、発症した場合の母体の死亡率は0.2%~30%、胎児の死亡率は50%~70%と、非常に深刻な結果となります。
子宮破裂の原因
【子宮に手術痕や外傷がある】
妊娠前に子宮筋腫などの病気治療のために行った手術や帝王切開の経験がある場合、その傷ついた部分が子宮の裂傷を招く原因となり、子宮破裂が起こりやすくなります。特に、帝王切開の経験がある人が次の出産で経腟分娩を行った場合に、子宮破裂が最も多く発生しています。また、子宮の手術から数年経過している場合であっても、その手術部位が裂傷を引き起こすこともあります。事故で子宮が衝撃を受けた場合も、子宮破裂の原因となることがあります。
【子宮壁が弱くなっている】
子宮の手術歴などがなくても、子宮壁が自然に弱くなり子宮破裂に至る場合もあります。経産婦、多胎妊娠、巨大児の妊娠などの場合、子宮壁が限界まで伸びて薄くなってしまっていることもあるので、子宮破裂が自然に起こることがあります。
【出産時のトラブル】
出産時に投与される陣痛促進剤(子宮収縮薬)が適量でなかった場合、副作用の一つとして強すぎる陣痛が起こることがあります。この深刻な副作用により、子宮破裂が起こります。また、分娩の際に医師が妊婦のお腹を押して胎児を押し出す行為(クリステル胎児圧出法)を何度も繰り返すことによっても子宮破裂が起こります。この圧迫により、子宮破裂を引き起こすだけでなく、胎児にも悪影響を及ぼします。胎盤の循環が悪くなり胎児の状態が悪化するため、胎児が重度の脳性麻痺となるのです。
子宮破裂の事例
以下に私の子宮破裂時の状況、そして他の方の事例を載せたいと思います。
私の子宮破裂時の体験談:妊娠12週目のある日の夜、腹痛がだんだんひどくなってきて脂汗が出てきたのでこれは何かが起こっていると感じました。夫に電話をしましたがすぐに繋がらず、このまま家に一人でいて気絶してしまうのを恐れ、(今だったら妊娠していることや担当医の名前も自分の意識があるうちに救急隊員に伝えられる)と思い、救急車を呼びました。救急車は5分もしない内に到着しエマージェンシーに担ぎこまれましたが、激痛のあまり叫び続けていたのを覚えています。血圧はかなり下がり、自分が叫んでいる中でも突然意識が無くなる瞬間が何度もありました。夫もエマージェンシーに到着しましたが、病院側はお腹の中で何かが起きているのは確かだが、開腹しないと詳しいことがわからないと言うので赤ちゃんは失うかもしれないということを伝えられた後、手術をすることになりました。そこに見えたものは、底が4-5センチ裂けた子宮とそこからの出血、そして胎児は子宮から飛び出ていました。結局胎児は助からず、自分の血も3000㏄失いました。子宮筋腫手術から7カ月目の出来事でした。ドクターには「よく一人で救急車を呼びましたね、もう少し遅かったら出血多量であなたの命も無かったと思います。」と言われました。また色々なドクターにこのような妊娠の初期(12週目)で子宮が破裂したケースを見た事がないと言われました。
子宮破裂ケース1:妊娠の3年前に子宮筋腫の手術をし、その後自然妊娠で第一子を授かりました。妊娠24週頃から陣痛のような腹痛の訴えがあったものの、薬の服用で痛みは治まっていました。妊娠25週のある日、突然下腹部痛を発症し、痛みが治まらないので救急搬送されました。医師の迅速な対応により、胎児は1000g未満で出生し、母体も術後の経過が良く術後一週間ほどで退院しました。また、1000g未満だった赤ちゃんも、4か月後に無事退院しました。
子宮破裂ケース2:5年前に受けた子宮筋腫の手術が原因で子宮破裂を起こし、大きな病院へ救急搬送されました。母体は、大量出血を起こし非常に危険な状態でしたが助かりました。しかし、妊娠30週の胎児は助けることはできませんでした。
子宮破裂ケース3:出産時に子宮破裂が起こり、その時のストレスにより脳性まひになってしまった赤ちゃんがいましたが、後日亡くなりました。誕生した時点で医師より、自力で生きていくことができないと言われていました。
子宮破裂ケース4:妊娠32週で切迫早産の危険性があるため入院していた妊婦は、妊娠以前に子宮筋腫の手術を受けていました。入院していたある日、突然の腹痛を起こし、そのまま全身麻酔による手術を行いました。開腹してみると、胎児が完全に子宮から飛び出していて、また子宮にも裂傷があり、母子ともに非常に危険な状態でした。胎児は、胎盤が子宮についた状態だったため無事誕生しました。母体も、術後の経過が良く無事退院しました。
子宮破裂ケース5: 第一子を帝王切開で出産。その1年後に第二子を妊娠していることが判明しました。第一子を出産してから1年10か月後に、医師と事前に相談したうえで第二子を自然分娩で出産することを決断しました。出産前日に陣痛が始まり、病院へ入院しました。出産当日の早朝、妊婦のおなかがパチンという音を立て、それと同時に激しい腹痛に見舞われました。直ちに自然分娩を取りやめ、帝王切開による分娩に切り替えました。その時の胎児の心音は聞き取りが困難で、心拍数もかなり落ち込んでいました。全身麻酔を妊婦に施し開腹してみると、子宮破裂が起きており胎児はすでに子宮外に飛び出していました。胎児は重度の仮死状態で誕生したため、その後大きな病院へ搬送されました。搬送先で胎児の容態が改善することはなく、自発呼吸をすることもなく、重い脳障害を患い、7か月後に亡くなりました。
子宮破裂ケース6:検診の際に、誘発分娩(人工的に陣痛を起こして出産する方法)希望であることを医師に伝え、内診や胎児の状態を確認した上で、希望通り誘発分娩することになりました。誘発分娩当日は、病院へ到着すると腹部に胎児の心拍を監視するためのベルトが装着され、子宮収縮剤の投与が始まりました。子宮収縮剤を投与して10分後に陣痛が始まりました。その後、2分間隔の陣痛が起こるたびに、胎児の心拍数が低下する症状(胎児の心拍数が毎分約140回だったのが、毎分約80回まで低下)が現れました。子宮収縮剤投与からおよそ2時間が経過した頃、たびたび起こる胎児の心拍数の低下を解消するために、妊婦の体位を変えました。これにより、胎児の心拍数の低下は治まりました。それから約1時間30分後(子宮収縮剤投与から3時間半後)、下腹部に異常な動きがあり、子宮破裂が起こりました。胎児は子宮外に押し出されてしまい、医師はすぐに帝王切開を行いました。胎児は、子宮外に押し出されたことにより酸素が取り込めなくなってしまい、無酸素脳症となり重度の脳障害が生じました。また、重度の精神運動発達遅延、脳性麻痺、てんかん、脳萎縮などにも罹患し、出生後は肺炎を繰り返しました。赤ちゃんは誕生して2歳になる前に、急性肺炎により亡くなりました。
まとめ
「帝王切開」「子宮筋腫」「陣痛促進剤」これらの言葉を聞くと多くの人が経験している事で、子宮破裂は特別な既往症がある人のみに起こるものではないということが分かりました。
子宮破裂の発症確率は、わずか1%未満。でも、ひとたび子宮破裂が起こってしまえばそのリスクは計り知れず、医師たちの懸命な処置にも関わらず、母体・胎児ともに重度の後遺症が残ったり、死に至ることもあるのです。このようなことが起こらないためにも、既往症についてはしっかり医師に伝え、妊娠中のリスクや薬の副作用についてもじっくり話し合う必要があると思います。
子宮破裂は発症の見極めが非常に困難であるにもかかわらず、発症した場合には迅速な対応が必要です。異常な痛みがあるにもかかわらず、妊婦がその痛みに耐えてしまったばっかりに医療機関への連絡が遅れてしまっては、せっかくの救える命も救えなくなります。出産中に発症した場合は、即座に帝王切開などの手術に切り替えなければならず、手術の準備がすでに整っていなければ母子ともに助からない場合があります。子宮破裂が疑われた場合は、いかに短時間で次の処置をするかが生死を分けます。今、産科医が減っている現状もあり、稀なケースのため、子宮破裂の患者の医療処置をしたことがない医師がほとんどなのですから、万が一の時の対応が大丈夫なのか?というのは気になるところです。
このようなリスクがあることを妊婦自身も含め、家族など周囲の人たちにも事前に説明をして、妊娠・出産に臨むことが大事だと思います。
私の事後談です。次の妊娠でまた子宮破裂を起こす可能性がゼロではないということを言われ、あの時の痛みや恐怖を考えると、爆弾を抱えて妊娠中何ヶ月間を過ごすことは精神面が持たないと思いました。また子宮破裂が起きた場合、母子ともに命を失うリスクを考え、夫は再度の妊娠を大反対し私たちは代理出産を決断しました。