昨日の続編です
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着替えて、尿検査。そして血液検査。
「どう?緊張してる?」
「採卵に対しての緊張より、間に合わないことへの
あせりのほうが大きくてまだどきどきしています」
帰りは私がドライバーになり、彼女を家まで
送り届けるということで書類にサインを
させられる。
彼女の方は今日このあと、安静にしている
こと、食べ物は刺激物などはだめで
体に優しい食べ物をとるなど説明を受けた。
薬は抗生物質を明日から2-3日飲むようにとのこと。
今日は点滴で受けているので、は飲む必要はないとの
こと。
麻酔科の先生が来て、自己紹介。
全身麻酔をかけられる。
私も自分の体外受精のとき、採卵の際に
麻酔をかけられたが、ごくごく軽いもので
すぐ目もさめた。
あっという間に、彼女は眠ってしまった。
そして、カラカラとベットが採卵室へと
引かれていった。
いつもこの瞬間、彼女たちを採卵室へ送り出すときに
なんか胸がきゅんとなる。
今まで彼女たちが育ててきた大事なものを
体内から取り出し、今日こそが依頼者のご夫婦へ
本当の意味で”提供する”日なのだ。
ひとつひとつのケースみんな違うのだが
この瞬間に思うことはいつも同じだ。
そして、彼女が卵子提供者として選定されてから
今までのことが思い出される。
このケースもここまでこれてよかった。
エージェントとして、ここまで来させるのが仕事といえば
そうなのだが、やはりドクター、提供者、依頼者、
エージェンシーすべての人が力をあわせて、
このプロセスに臨むのだ。
「元気な卵がいっぱいとれますように~」
依頼者のご夫婦のためにもお祈りする。
依頼者のご主人の精子は数ヶ月前の
渡米の際に採取し、保存してある。
彼女の卵子が取れるのをまっていて
それからその精子と受精させる。
今回はいい受精卵を作り凍結しておく
試みだ。
大きな待合室へ戻り、彼女の帰りを待つ。
30分とたたずにドクターが出てきた。
「どうでしたか~?」
「全部で13個の卵子が取れたよ。大きい卵胞2個は
中身(卵子)がなく空だった。でも卵子が入っている数が
13だったのでまずまずの結果だね」
「良かったです」
「明日、どのように精子と受精されたか
確認します」
「彼女もどってきていますか?」
「もとっていますよ、行ってあげなさい」
彼女はまだうつらうつらしていた。
ナースが少しずつ起こそうとしている。
だんだんと目が覚めてくる。
「採卵終わりましたよ~、大丈夫ですか?」
「はい・・・」
「13個の卵子が取れましたって、ドクター
から報告がありました。痛みはどうですか?」
「今はあまり感じません」
「気分はどう?」
「大丈夫です・・・」
「これ、依頼者の方からお手紙預かってきました。」
「わー、あと読まさせて頂きます」
気分がいいようで、自分で起きられたら
帰る用意してもいいとナースが言う。
ナースに着替えを手伝ってもらい
車椅子へ乗る。
彼女が乗せられる場所まで、車を
出しておくように言われる。
彼女を車にのせ、彼女の家へ向かう。
「採卵終わって今の心境は?」
「最後があっけなかったです」
今日が採卵かーと感情に浸る時間もなく、
ただただあせりばかりが先走っていたという。
かえって要らぬ心配をしなくてよかったのかも
知れない。
彼女を送り届け私も家路へ。
今日のミラクルベビーはちょっとした
ハプニングでどうなることか思ったが、
結果オーライ!の一日だった。