体外受精で待望の生命を授かったと喜んだ夫婦に
「他人の受精卵を移植した可能性がある」と
病院側からの知らせがあった。
香川県立中央病院での出来事だ。
担当医は61歳の体外受精を今まで1千件以上も手がけていた不妊治療の
専門家。
作業台で受精卵の成熟状態を確認した際、別人のシャーレに入った
受精卵と取り違えた可能性が高いと判断された。
この担当医は昨年10月中旬、女性の経過が順調なことに
「この女性は受精卵が発育しにくい傾向にあるのに」
と思いはじめた。そして自分のミスを疑い始めた。
どうやら、シャーレのふたには名前の記載があったが
受精卵が実際に入っている下のほうには名前の記載が無く
ふたをとって作業をしていたので、間違いが発生したらしい。
不思議に思ったのがニュースでは「取り違えた可能性」という
あいまいな言い方でしかない。
夫婦には「別人の受精卵の可能性がある」という説明で
中絶をすることになったのだが、「可能性」ということだけで
納得されたのだろうか?
そこには、報道されなかった決定的な「間違い」であるという
事実があるのだろう。
そし自分の受精卵を間違って他人に入れられてしまった
もう一人の女性にはだいぶ時間がたってから
話がされたとのこと。
受精卵といっても「命」である。
シャーレの中に入って肉眼では見えないもので
ものという扱いになってしまっているのではないだろうか。
体外受精が増えた今、もう一度医療現場では
そのことを考えて欲しいと願う。
今、体外受精を実行中のカップルには
不安がつのるニュースだった。
私も常に卵子提供の移植の場に立ち会うが
受精卵を移植する前には、受精卵を準備する
エンブリオロジストがドクターに名前を確認、
患者に名前を確認、患者がしている名札のような
タッグとも確認、何重にもチェックを重ね
間違いがないようにしている。
人間だから間違いは起こる。
それをどうやって防いでいくかという医療現場の
念入りな確認体制を強化して欲しい。